ケータイ辞書JLogosロゴ 小さな思いからの哲学


文化・芸術>現代社会と思想

 かつて、哲学や思想のテーマは大きかったはずだ。マルクス主義が力をもった時代には、貧困や資本主義をどうするか、権力をどう解体するか、社会正義は実現されるか、などが大きな社会的テーマとして人々に共有されていた。
一方、いまの私たちの多くは、友人関係、職場の人間関係、恋愛をめぐって、ただ漠然と悩んでいる。あの人に嫌われたらどうしよう、同僚たちとうまくやっていけるだろうか、などと。テーマは小さい。しかし、こうした悩みのなかで、私たちは傷つき、「生きるっていったいなんなんだ」という問いを思わず発してしまう。ここには、小さいながらも、よい関係、よい生き方を求める思いがある。この思いは、哲学が昔から問題としてきた真、善、美への思いにどこかでつながっているはずだ。大きな社会的テーマからではなく、小さな個々人の問題からスタートすることは、個の生を哲学の中心に据えた実存の哲学とモチーフを共有している。だが、実存の哲学は、社会の大きな問題に目をつぶり、個々人の小さな問題にひきこもる思考なのではないか? これは実存の哲学に寄せられてきた疑問だ。この疑問にうまく答えられるかどうか、いまはまだわからない。しかし、私たち一人ひとりの抱える小さな真、善、美への思いから始めることしか現代の哲学の可能性はないように思われる。(石川伸晃)
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「(C)知恵蔵2007」
JLogosID:14849435
最終更新日:2011-01-01




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