ケータイ辞書JLogosロゴ 川のよみ
【かわのよみ】

第3章 人生の後半戦を愉しめる人>アラカワと「カワ」のつく地名

■「何々カワ」と読ませる地名
「何々カワ」は例外的だとして、アラカワのつく地名と荒川について見てきたが、その反証もつけ加えておこう。以下に、行政区画としての市町村・郡名の範囲に限り、その例を挙げてみる。
〈北海道〉
 川を表す地名「別」「内」の本場北海道にもいくつかの「何々カワ」がある。旭川市・滝川市がその例だがそのうちの一つ、新十津川町は、『太平記』以降の、いわゆる南北朝時代の逸話に富む十津川村(現在の奈良県吉野郡)の出身者が、明治になって開拓した土地だという。故郷の川の呼び名を、遠く離れた新天地に移してそのまま残ったケースといえる。
「カワ」と読ませる行政区画名は、北海道では先に挙げた三例のほか、上川郡・上川町・東川町・下川町・鵡川町などの計八つがある。
〈東北地方〉
 宮城県=古川市・黒川郡(原発のある女川はオナガワと濁る)。秋田県=合川町・稲川町。山形県=西川町・立川町・三川町。福島県=白河市・塩川町・白川郡・石川郡・玉川町(多くのタマガワの中でここだけが澄んだカワであり、近くに浅川町もある)。
〈関東地方〉
 茨城県=千代川町。栃木県=上三川町。群馬県=渋川市・粕川村。埼玉県=荒川村・神川村・吉川市。千葉県=市川市。神奈川県=寒川町・愛川町・清川村。
〈中部地方〉
 新潟県=黒川村・西川町・上川村・三川村・関川町・荒川町・相川町。富山県=滑川市・上新川郡・下新川郡(もちろんシンカワではなくてニイカワと読む)。石川県=石川郡・美川町。山梨県=市川大門町・早川町・武川村。長野県=松川町・楢川村・松川村。岐阜県=白川町・東白川村・蛭川村・丹生川村・荘川村・古川町。静岡県=芝川町・富士川町(このフジカワは注目に値する。というのは、実際の川が流れる現場ではフジガワなのかもしれない)。愛知県=豊川市・新川町。
〈近畿地方〉
 奈良県=天川村・十津川村。
 滋賀県・京都府・大阪府には、ガワのつく行政区画名はあるが、カワは見事なまでに見られない(京都市内を流れる白川くらい)。兵庫県=吉川町・市川町。和歌山県=粉河町。
〈中国・四国地方〉
 島根県=簸川郡・斐川町(スサノオノミコトが大蛇退治に活躍する出雲神話の発端をなす「簸の川」のヒカワ。なお、同音の氷川はさいたま市(旧大宮市)の氷川神社を始め、全国的に神社の名として分布する)。山口県=美川町。徳島県=山川町・井川町。香川県=大川郡・大川町(寒川町と書いてサンガワという例もある)。愛媛県=美川村・肱川町・城川町。高知県=吉川村・大川村・佐川町・窪川町(吾川郡・吾川村はガワ)。
〈九州・沖縄地方〉
 福岡県=大川市・広川町・山川町(桂川町はケイセンマチ)。大分県=直川村。沖縄県=石川市・具志川市と同市の字名に具志川、島尻郡具志川村具志川の三例がある。
 本当は「何々ガワ」という名称も併記して、「カワ」と「ガワ」の割合の地域別特徴や、その特徴の言語学的な理由・法則性までを述べなければならないのだが、ここでは非常に人為的な手が加わっていることが多い行政区画名の現状においては、「何々ガワ」という表現が圧倒的に多いことだけを紹介した。
 再三述べたように、行政区画名とその管轄内にある実際の河川を、地元の人がどのように呼んでいるかは、全部確認したわけではない。しかし、そのようなことを考慮したうえでも、本書で繰り返し強調する「カワ」は「ガワ」をつくって流れる存在であることだけは、理解していただけるかと思われる。
<補足>東京に意外に多い「カワ」
「何々カワ」の地名を挙げた前項で東京の例を除いた理由は、本題のアラカワにも関連することなのだが、実は東京には「カワ」が案外多いからである。
 都心の日本橋川と神田川の原形だった河川に、平川があった。現在でも皇居東御苑の北口に、江戸時代以来の城門である平川門が健在である。かつてその門内には貞治元(一三六二)年以来の平川天神が祀られていたが、徳川家康が始めた江戸城増築工事で、その社は現在の千代田区平河町に移された。さらに、江戸時代中期にその門前町の一部が神田に移され、千代田区神田平河町として、JR秋葉原駅東口付近に現存する。自然河川の平川の名は、このような形で生きているのである。
 渋谷区には新宿御苑と明治神宮内に水源を持つ渋谷川が流れているが、港区に入ると古川となって、竹芝から東京湾に注ぐ。また、現在の文京区の西半分一帯には、昭和二二(一九四七)年まで東京の区名の一つとして小石川区があった。その名は今でも文京区小石川(一〜五丁目)に残る。
 多摩川を遡って内陸部に入ると、立川(市)を始め、多摩市と日野市内に落川がある。あきる野市には花川があり、その付近には青森・秋田に多い三内までもある。さらに上流に遡ると、奥多摩町に氷川がある。前にも述べたが、武蔵野台地と大宮台地には氷川を称する神社が多数分布する。この二つの台地の間を流れるのがアラカワであることはいうまでもない。
 東京都と神奈川県の境を流れる、その名も境川流域の町田市には、神奈川県内にも続く鶴間(川の氾濫状態を形容する地名)と並んで鶴川という村があった。しかしこれは、河流や河川名とは無関係の地名である。
解説文を自分にメール
メアド:Milana@docomo.ne.jp

(C)日本実業出版社「川を知る事典」('03/11)
JLogosID:4495071
最終更新日:2003-11-01




ケータイ辞書 JLogosトップ