ケータイ辞書JLogosロゴ 夜をこめて


百人一首

夜をこめて 鳥の空音(そらね)に はかるとも よに逢坂(あふさか)の 関はゆるさじ
〈後拾遺・雑二・九三九・清少納言(せいせうなごん)〉
[訳]「孟嘗君(もうしょうくん)は、まだ夜が明けないうちに、鶏の鳴きまねでだまして函谷関(かんこくかん)をあけさせることもできたでしょうが、あなたと私が逢(あ)うという逢坂の関は決してあけることなど許しません」
<参考>『枕草子』の「頭の弁の、職にまゐり給ひて」の段に、この歌にまつわる逸話が記されている。『後拾遺和歌集』の詞書はそれを簡略化したものであり、清少納言が中宮職の御曹司(みぞうし)に参上した藤原行成(ゆきなり)と対話していたところ、帝(みかど)の物忌(ものいみ)で清涼殿(せいりょうでん)の殿上(てんじょう)の間に伺候(しこう)するということで帰っていった。翌朝「鶏の声にせき立てられて」と言ってよこしたので、「函谷関のことかしら」と言ってやると、「これは逢坂の関です」と言ったので、この歌を詠んで贈ったとある。「函谷関」は、斉(せい)の孟嘗君が、食客に鶏の鳴き声をまねさせて関の戸をあけさせ、秦(しん)の追っ手から無事逃れたという鶏鳴の故事(『史記』)である。行成が自分の言うのは逢瀬(おうせ)を暗示する「逢坂の関」だと戯れたので、清少納言は私は賢い関守だからだまされないとこの歌で応じた。これに対して行成は、「◎逢坂は人越えやすき関なれば鳥鳴かぬにも開けて待つとか」という負け惜しみの歌を返している。和歌による知的な会話が交わされていた、当時の宮中のサロン的な雰囲気を伝える挿話である。流布本(るふぼん)『小倉百人一首』や『枕草子』では、第二句は「鳥の空音は」となる。
解説文を自分にメール
メアド:Milana@docomo.ne.jp

(C)東京書籍[全訳古語辞典('06/2)]
JLogosID:5113459
最終更新日:2007-12-11




ケータイ辞書 JLogosトップ