ケータイ辞書JLogosロゴ 人形と雛
【ひとがたとひいな】

暮らしと文化

人形は「形代(かたしろ)」や「撫(な)で物(もの)」ともいい、人の形に切った紙で身体をなでて、罪、けがれ、災いなどを移して流す風習に用いられた。三月の上巳(じょうし)の節句に、水辺で禊(みそぎ)や祓(はら)えをする際に使われたものが、代表的な例である。
『源氏物語』の須磨(すま)巻の巻末で、「弥生(やよひ)の朔日(ついたち)に出で来たる巳(み)の日」に、光源氏はある人の「今日なむかく思(おぼ)すことある人は禊し給ふべき」という進言によって、「この国に通ひける陰陽師(おむやうじ)」を召して祓えをさせ、「舟にことごとしき人形乗せて流す」のを見る。須磨への流謫(るたく)は冤罪(えんざい)とする光源氏が逆境を打開しようと祓えをさせたのだが、ここでは舟に乗せるほどのかなり大きい人形を用いている。
また、宿木(やどりぎ)巻では、薫(かおる)が亡き大君の「人形」や絵を作らせたいと中の君に言うと(→ひとがた<1>)、中の君はそれを人形(にんぎょう)(像)ではなく禊に用いる人形(ひとがた)のことと解した。そして大君を御手洗川(みたらしがわ)に流すような人形にするのはかわいそうだと反対して、「うたて御手洗川近き心地する人形こそ思ひやりいほしく侍れ」と言った。
一方、雛(ひいな)は今日(こんにち)の人形(にんぎょう)のことで、当時の女児も「雛遊び」といって人形で遊んだ。同じ『源氏物語』の若紫巻で、光源氏は二条院に引き取った幼い紫の上とともに人形遊びをして、藤壺(ふじつぼ)への思慕を紛らわす慰めとしている。「雛(ひひな)など、わざと屋ども作り続けて、諸共に遊びつつ、こよなき物思ひの紛らはしなり」とあり、作り物の御殿などもついた豪華なものであった。また、紅葉賀(もみじのが)巻には、「三尺の御厨子(ずし)一具(ひとよろひ)に品々しつらひ据ゑて、また、小さき屋ども作り集めて奉り給へる」とある。この大切な雛遊びの道具を、犬君(いぬき)が迫儺(ついな)の日に大騒ぎをしてこわしてしまったことが記されている。『源氏物語画帖』にこの場面があり、豪華な御殿にりっぱな調度や着飾った人形が並んでいる。
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(C)東京書籍[全訳古語辞典('06/2)]
JLogosID:5113465
最終更新日:2007-12-11




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