ケータイ辞書JLogosロゴ 季節の推移を示す景物
【きせつのすいいをしめす】

暮らしと文化

日本人の季節意識は、『古今和歌集』以来の四季の歌によって形成されたといってよく、それは歳時記にまで及んでいる。『古今和歌集』では恋の歌とともに四季の歌が重視され、季節の推移に従って配列された。こうして人は景物によって季節の変化をいっそう強く感じ取るようになり、『古今和歌集』をはじめとする平安時代中期の三代集で、季節意識はほぼ確立する。
立春のしるしは霞(かすみ)で、「春霞立てるやいづこみ吉野の吉野の山に雪は降りつつ」〈古今・春上・三・詠み人知らず〉では、春霞を待ちかねるようすが詠まれる。また、うぐいすは春を告げる鳥とされ、「春来(き)ぬと人は言へども鶯の鳴かぬ限りはあらじとぞ思ふ」〈春上・一一・壬生忠岑〉では、うぐいすが鳴かないうちはまだ春にならないと言う。ほかに、『礼記(らいき)』月令(がつりょう)の「孟春の月、東風凍(こほり)を解く」をふまえた解氷などが、春の訪れを示す景物である。
夏の到来を知らせるものは卯(う)の花や衣がえである。「卯の花の咲ける垣根の月清(きよ)み寝(いね)ず聞けとや鳴く時鳥(ほととぎす)」〈後撰・夏・一四八・詠み人知らず〉は月夜の卯の花の垣根で鳴いているほととぎすをうたい、また「鳴く声はまだ聞かねども蝉の羽(は)の薄き衣は裁ちぞ着てける」〈拾遺・夏・七九・大中臣能宣〉では、せみの羽のような薄い夏衣を着たことを詠んでいる。
秋を知らせるのは涼しい秋風で、「夏と秋と行き交ふ空の通ひ路は片方(かたへ)涼しき風や吹くらむ」〈古今・夏・一六八・凡河内躬恒〉(夏と秋とがすれ違う空の通路は片側だけに涼風が吹いているのか)、「秋来(き)ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」〈古今・秋上・一六九・藤原敏行〉(→あききぬと…〔〔和歌〕〕)などの名歌が残されている。
冬は紅葉を散らす時雨(しぐれ)で始まる。「竜田川錦織り掛く神無月時雨の雨を経緯(たてぬき)にして」〈古今・冬・三一四・詠み人知らず〉(竜田川は時雨の雨筋を縦糸と横糸にして錦を織りなしている)などの歌がある。
解説文を自分にメール
メアド:Milana@docomo.ne.jp

(C)東京書籍[全訳古語辞典('06/2)]
JLogosID:5113471
最終更新日:2007-12-11




ケータイ辞書 JLogosトップ