ケータイ辞書JLogosロゴ 今昔物語集
【こんじゃくものがたりしゅう】

主要作品解説


作者・成立
作者は未詳。個人の編纂へんさんか、多人数による共同作業かも不明であるが、多くの仏典を引用している点から、京都・奈良周辺の寺の僧侶そうりょであろうと考えられている。 成立は平安時代末期。歌論書の『俊頼髄脳としよりずいのう』(天永二(一一一一)年ごろ成立)が利用されていることから、それ以降、保安元(一一二〇)年から二十年ほど後までの間の成立と考えられている。 各説話はすべて「今は昔」で始まっており、書名は「今は昔の物語」を集めた作品の意である。また、説話の最後は原則として「…となむ語り伝へたるとや」で終わるようにととのえられている。 なお、もとの表記では漢字に小書きの片仮名を交えているが、読みやすいように漢字まじり平仮名文に改めることが多い。
内容・構成
全三十一巻(うち巻八、十八、二十一は欠)。千話を超える説話が国別に、仏教説話から世俗説話へと整然と収められており、わが国最大の説話集である。各巻においては、同類の話が二話(時に三話)ずつのセットにされている。 構成は巻一~巻五が天竺てんじく(=インド)部、巻六~巻十が震旦しんたん(=中国)部、巻十一~巻二十が本朝(=日本)仏法部、巻二十二~巻三十一が本朝世俗部となっている。 天竺部では釈迦仏しゃかぶつの伝記、仏像や経典の霊験れいげん、動物報恩譚ほうおんたん、震旦部では仏教の伝来と流布るふ 、孝子譚などの因果応報譚、中国の歴史を取り上げ、本朝仏法部では仏教の伝来、寺院縁起、往生、出家、天狗てんぐなど、本朝世俗部では武芸、音楽、詩歌、宿報、霊鬼、滑稽こっけい、悪行など、さまざまな内容の説話を集めている。 これらの説話のほとんどは、先行する文献を利用して書かれたと考えられる。例えば、本朝仏法部の説話の多くは、『日本霊異記にほんりょういき』以下の仏教説話集や、僧伝・仏寺縁起などから採られている。
文体・特色
漢字まじり片仮名文の漢文訓読文体で書かれており、中世の軍記物語や紀行に見られる和漢混交文体の先駆けとなった。 登場人物はインド・中国から日本まで広がり、皇族・貴族・僧侶・役人・武士はもちろん、都市の庶民から農民・商人・盗賊など、さまざまな階層に及んでいる。 内面描写や叙情表現とは無縁な説話の文体により、広い層の人々の言動と知恵を仏教語・漢語・俗語などを交えて生き生きと写し出したところに、この説話集の大きな特色と意義がある。巻二十五の十二話の源頼信よりのぶが馬盗人をつかまえた話、巻二十六の十七話の芋粥いもがゆを飽きるほど食べたいと願った五位の話、巻二十八の三十八話の「受領は倒るる所に土をつかめ」と豪語した信濃守しなののかみ藤原陳忠のぶただの強欲な話などはよく知られる。 なお、近代作家では芥川龍之介がいち早く注目し、『今昔物語集』に取材して短編小説『羅生門らしょうもん』(大正四(一九一五)年)、『鼻』『芋粥』(大正五(一九一六)年)を書いた。谷崎潤一郎もヒントを得て『少将滋幹しげもとの母』(昭和二四(一九四九)年)を書くなど、近代作家の創作欲を刺激し、名作を生む母胎ともなっている。
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(C)東京書籍[全訳古語辞典('06/2)]
JLogosID:5113642
最終更新日:2007-12-11




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